マルティン・ヘルムヒェン バッハ パルティータ 第1番 BWV825

 ドイツの中堅とピアニスト、マルティン・ヘルムヒェンによるバッハ パルティータ 第1番 BWV825。クラヴィーア練習曲集 第1集として出版、カペルマイスターを務めたケーテン レオポルト侯爵の長男、ルートヴィッヒ・エマヌエルに献呈した。

 バッハは、ケーテンからライプツィッヒ 聖トーマス教会カントールに就任した。レオポルト侯爵が亡くなった際、葬儀に参列、カンタータを演奏して、主君への追悼とした。最初に結婚した侯妃、フリーデリーケ・ヘンリエッテが亡くなって、再婚した侯妃、シャルロッテ・フリーデリーケ・ヴィルヘルミーネとの間に世継ぎのエマヌエル・ルートヴィッヒ、レオポルディーネ・シャルロッテが生まれたものの、幼くして亡くなってしまう。フリーデリーケ・ヘンリエッテとの間に生まれたギーゼラ・アグネスのみとなった。

 第1番を聴くと、世継ぎ誕生の喜ばしい雰囲気が漂う。プレリュードのたっぷりした歌心、アルマンド、コレンテでは音楽が流れる中でも歌がある。サラバンドでの素晴らしい歌心は見事である。メヌエットでは、フレージング、装飾音を加え、豊かなニュアンスを醸し出す。トリオでは、チェンバロの2段鍵盤を意識してか、音域を変えている。歌心豊かである。活気に満ちたジーグ。全体の締めくくり役となる。

 ヘルムヒェンも若手から中堅へと成長し、音楽も心境著しい。ラルス・フォークトがガンで亡くなった今、マルティン・シュタットフェルトと共にこれからのドイツ・ピアノ界を牽引する一人として、さらなる活躍を期待するとともに、音楽面でも素晴らしい成果を上げてほしい。