マリア・ジョアン・ピレシュ モーツァルト ピアノ協奏曲 第27番 K.595

 マリア・ジョアン・ピレシュ、モーツァルト、ピアノ協奏曲、第27番、K.595。トレヴァー・ピノック、ヨーロッパ室内管弦楽団との共演。モーツァルト最後のピアノ協奏曲の簡素、かつ透明な響きの中に一種の寂寥感が漂う。

 ピノックの見事な指揮、オーケストラ。ピレシュの透明感溢れる、歌心たっぷりの音楽。モーツァルト最後のピアノ協奏曲に相応しい。第1楽章の流れ、簡素な中に漂う寂しさ。モーツァルトがたどり着いた境地が聴こえる。カデンツァでのたっぷりした歌。技巧をひけらかすより、音楽となっている。

 第2楽章。透明感あるピレシュのピアノの音色と歌。深々と歌い上げる。ピノックもこれに応じ、オーケストラもたっぷり歌わせ、モーツァルトの心境を見事に表現している。

 第3楽章。歌曲「春への憧れ」K.596に用いられたロンド主題が明るく、深々と歌われる。無邪気な中に寂しさを秘めつつ、透明な音の世界が広がっていく。ピアノ、オーケストラが一体となった、大きな世界が広がっている。それでも、モーツァルトの音楽の範疇にある。カデンツァを聴いても、音楽と一体化している。ヴァルター・クリーンが「春への憧れ」をカデンツァに挿入した、心憎い演奏もあった。ピレシュは、あくまでも透明なひびきの中に寂しさを秘めた、心に響く音楽を奏でる。それがピレシュのモーツァルトである。