ヴィルヘルム・バックハウス ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第4番 Op.58

 ヴィルヘルム・バックハウス、ベートーヴェン、ピアノ協奏曲、第4番、Op.58。バックハウスはこの曲を大変得意にしている。カール・ベーム、ヴィーン交響楽団との映像版、ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団との共演など、色々な録音を残している。ハンス・シュミット・イッセルシュテットとの共演によるこの盤も名演だろう。

 ベームとの共演版では、バックハウスへのインタヴューがある。この協奏曲について、「オリュンポスの威光」と称している。古代ギリシャ、オリュンポスの威光を思わせる。同時期の交響曲、第4番、Op.60も、シューマンが「ギリシャの可憐な乙女」と称している。ピアノ協奏曲、交響曲、共に第4番にはギリシャの威光が感じられ、古代ギリシャへのベートーヴェンの憧れが感じられる。

 第1楽章。ピアノが歌い出す第1主題。まさしくギリシャの世界である。この協奏曲に初めて惹かれた中学3年、修学旅行で京都・奈良に行った際、「東洋のギリシャ」奈良には相応しいと思った。奈良を思い出すと、この協奏曲がぴったりする。バックハウスがただ一度来日した際、奈良にも行き、東大寺の大仏殿を見たという。法隆寺はどうだったか。知りたいところである。ピアノ、オーケストラからギリシャの光が輝き、全体に満ち溢れていると言ったらいいだろう。奈良にも似合う。

 第2楽章。ここは弦楽器とピアノとの峻厳な対話。当時、ベートーヴェンはブルンズヴィック伯爵家出身、ダイム伯爵夫人となったヨゼフィーネと恋愛関係にあった。ヨゼフィーネは夫、ダイム伯爵に先立たれ、心身症を患っていた。そんな中、ベートーヴェンは恋愛関係になりつつも、厳しく自分の内面を見つめていただろう。この楽章には、オルフェウスが冥界から妻、ユーリディケを連れ戻そうとする情景を思わせることから、オルフェウス神話とのつながりが伝えられてきた。法隆寺の救世観音像を見ると、この楽章を思い出す。フェノロサがこの像を見た際、観音像の微笑みに魅せられたという。聖徳太子ゆかりの寺、法隆寺には太子一族の悲劇もあり、この像を見るなら一番合っているだろうか。

 第3楽章。ギリシャの自然、奈良の自然が目に浮かぶ。明るい陽光、山々に包まれ、神々しさを誇る風景。どちらも調和する。聴きどころはヴィオラ、チェロがピアノと絡み合い、ロンド主題をたっぷり歌う。ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団の弦の響き、バックハウスのピアノが見事に調和している。コーダ前のカデンツァはバックハウス自身のもの、ギリシャの光に満ちた素晴らしいカデンツァ。作品に相応しい。奈良へ行くなら、この協奏曲の楽譜をお供にして行きたい。そう思ってしまう。ギリシャの自然への賛歌であり、奈良の自然にも相応しい。

 バックハウスはヘルベルト・フォン・カラヤンともこの協奏曲を共演しているという。カラヤンとの共演はブラームス、ピアノ協奏曲、第2番、Op.83のライヴ録音が残っている。これはあるだろうか。もし、録音が出てきたら、一大センセーションを巻き起こすだろう。

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コメント: 2
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    admin (木曜日, 21 4月 2022 05:46)

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  • #2

    admin (木曜日, 21 4月 2022 05:47)

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