サントリー音楽財団 サマーフェスティバル ザ・プロデューサー・シリーズ 東洋ー西洋のスパーク コンテンポラリー・クラシックス


 サントリー音楽財団、サマーフェスティバル、2021年のザ・プロデューサー・シリーズは、パリ発ー「新しい」音楽の先駆者たちをテーマに、大ホールではアンサンブル・アンテルコンタンポランによる東洋―西洋のスパーク、コンテンポラリー・クラシックスという、聴き応え十分のコンサートを行った。(22日 24日)

 東洋―西洋のスパーク。細川俊夫、オペラ「二人静」(初演)に始まる。世阿弥の謡曲に基づき、幼い弟を失い、難民となった少女ヘレンが浜辺にたどり着く。そこへ、源義経の側室、静御前がやって来て、義経の子を身ごもっていたものの、男の子だったため、兄、源頼朝に殺されてしまった悲劇を語る。ヘレンも静御前の語りを聞き、幼い命を失った2人は声を合わせていく。静御前は立ち去り、ヘレンがその場に残る。シュシュティン・アヴェモ、青木涼子が東洋、西洋の違いを乗り越え、素晴らしいオペラを作り上げていた。

 マーラー「大地の歌」は元来、交響曲である。中国の詩人たちの作品をドイツ語に訳したハンス・ベートゲ「中国の笛」による。李白、王維、孟浩然の詩を取り上げたマーラーは、妻アルマと建築家ヴァルター・グロピウスとの関係に翻弄されていく。そんなマーラーの思いが、この作品を生んだ。夏を過ごしたトブラッハ(ドッビアーゴ)の家は、山峡の中にあったためか、永遠なるものへの思いも強かった。アルマとは一方通行な関係にあったため、アルマがうつ状態になり、アルコール依存となった。それが、グロピウスとの関係に繋がったともいえようか。酒の中に人生のはかなさを歌った李白、別れとさすらい、死への思い、永遠への思いを歌った孟浩然、王維への共感が滲み出ている。ベンヤミン・ブルンズ、藤村美穂子が素晴らしい歌唱を見せ、マーラーの晩年を描き出した。

 コンテンポラリー・クラシック。ヘルムート・ラッヘンマン「動き」はカブトムシが死に至るまでの過程を描いたもの。生の終りを感じさせた。ピエール・ブーレーズ「メモリアル」は、28歳で急逝したアンサンブル・アンテルコンタンポランのフルーティスト、ローレンス・ポールガール(1956-1985)への追悼。聴き応えある作品であった。マーク・アンドレ「リス」から、ジョルジュ・リゲティ「ピアノ協奏曲」。アフリカ音楽に基づく作品で、ピアノを見事に生かした傑作。永野秀樹が素晴らしい。今年のテーマ作曲家、マティアス・ピンチャー「ペレシード(始まり)」には、ヨーロッパの源、キリスト教が感じられた。

 アンサンブル・アンテルコンタンポラン、ピンチャーの演奏がこの素晴らしいコンサートを生み出した。見事な一時だった。