角野隼斗 ショパン ピアノ協奏曲 第1番 Op.11

 ショパンコンクールに出場しながら、本選に残れなかった角野隼斗がマリン・アルソップ、ポーランド国立放送交響楽団と共演したショパン、ピアノ協奏曲、第1番、Op.11。ライヴCDが12月に発売されるとのこと、これは聴きもの。You Tubeでお楽しみいただこう。

 10月17日、ショパン召天の日の演奏。角野の思いが伝わる。第1楽章の闊達さの中に素晴らしい歌心が見事に調和している。アルソップが素晴らしいバックアップぶりを見せている。ピアノの音色も見事、きらめく音色が絶品である。第2楽章、オーケストラの印象的な冒頭から、ピアノが静かに歌い出す。あまりにも清純、かつ深い歌心に満ちた音色。ショパンの青春の思いを見事に歌う。ピアノとファゴットとの絡み合いも聴きどころだろう。決してこれ見よがしにならない角野の演奏は立派である。第3楽章、角野のピアノの音色が素晴らしいし、歌心溢れる演奏である。ポーランドの田園を思わせる。オーケストラも立派である。

 ポーランド国立放送管弦楽団は、1935年、グジェコシュ・フィデルベルクがワルシャワで結成、しかし、第2次世界大戦勃発、ドイツによる過酷な占領期を経て、1945年3月、ロシアによる祖国解放を受け、ヴィトルド・ロヴィツキがカトヴィツェで再結成、カトヴィツェを本拠に活動している。このオーケストラとの共演は、角野にとっても大きな財産になるだろう。CD発売が楽しみである。

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コメント: 1
  • #1

    黒沼ユリ子 (木曜日, 27 10月 2022 16:00)

    素晴らしい名演奏です! とにかくこのショパンのコンチェルトが、あたかも彼のために書かれていたかのように演奏者と作曲家が一体化しているからです。つまりあたかも角野さんが作曲した曲ででもあるかの様に。戦後、田中希代子さんがヨーロッパ中で大拍手を受けた時代のヨーロッパ人の評価基準は「東洋の隅っこの国・日本の女の子が、よくもまぁ、こんなにショパンらしく弾くものだ!」という驚きだったのだと思いますが、あれから半世紀以上を経た今日、角野さんは、全く自分の曲として「自然に」演奏しています。すでに彼が「日本人」であることは、全く誰も意識する必要がないわけです。私も「日本人の君がよく、まるでチェコ人の様にドヴォルジャークを弾くね〜!」という褒め方をされていましたから・・・。「時代が進歩して羨ましい」とも感じない訳ではありませんが、あの時代があったからこそ今日その地の上にこのような大木が育ったのだという自負とも、慰めとも言えるような気持ちもあります。とにかく、おめでとうございます。この様な名演奏を死ぬ前に聴くことができて最高に幸せに感じ、嬉しいです。どうぞ、ご自分の「歌」を今後もたくさんの人々にお届け下さい。