サンソン・フランソワ フォーレ ノクチュルヌ 第6番 Op.63

 46歳で早世したフランスのピアニスト、サンソン・フランソワの貴重な遺産の一つ、ガブリエル・ウルバン・フォーレ(1845-1924)のノクテュルヌ、第6番、Op.63。

 フォーレのノクチュルヌはショパンの影響もあるとはいえ、フランスのエスプリに満ち、内面的、かつ豊かな響き、深い歌心に満ちている。第6番はフォーレのノクチュルヌ中の傑作で、夜のしじまの中で一人瞑想しながら、物思いにふける人がいる。

 フォーレは彫刻家エマニュエル・フルミエの娘マリーと結婚、2人の息子をもうけた。マリーは自意識・猜疑心が強く、心配性で気まぐれだった上、社交嫌いで家にこもりきりだった。フォーレがサロンなどに出入りする際、マリーに同伴を求めても断っていた。そのため、エンマ・バルダック、アディーラ・マディソン、マルグリット・アッセルマンとの恋愛関係を築くようになった。気位が高く、サロンでの社交も嫌っていたことが、フォーレがサロンで出会った女性たちとの関係に至った。エンマ・バルダックは後に、ドビュッシーと再婚した。エンマとの間にエレーヌ(ドリー)をもうけていたこともあってか、フォーレとドビュッシーの仲が悪かった。

 フォーレはノクチュルヌ、舟歌、即興曲を生涯にわたって作曲している。ロマン主義から出発する中、フランスのエスプリを湛えたものになり、ドビュッシーの印象主義への道を切り開いた。それがラヴェルへと受け継がれたことは大きい。フランソワがショパンに精通していたことが、フォーレにも繋がり、フランスのエスプリ豊かで深い歌心溢れる名演に繋がった。コンサート・ライヴとはいえ、貴重である。