アルトゥール・ルービンシュタイン ショパン バラード 第1番 Op.23

 ショパン演奏の王道、アルトゥール・ルービンシュタインのショパン、バラード、第1番、Op.23。ホロヴィッツの演奏の素晴らしさもさることながら、ルービンシュタインのショパンを聴くと、ショパンの音楽そのものだと思わせる。

 冒頭のC音。物語の始まりを告げる。物悲しい第1主題が盛り上がりを見せ、第2主題の温かみ溢れる歌。自然で何の衒いもなく聴かせてしまう。ショパンの本質、歌をたっぷり聴かせる。再び、第1主題が現れ、第2主題。コーダの迫真に満ちた演奏。物語の結末を見るかの如くである。

 シューマンは、このバラードを「最高の作品」と評価するものの、ショパンは、シューマンを「音楽もやるアマチュア」と評している。父親の温かい愛情に包まれ、音楽家としての才能を見せながらも、姉の自殺・父親の死で音楽への道を絶たれ、法律の道に進むよう促されたシューマンは、音楽への道を諦めず、ピアニストとしてその道に戻ろうとしていたとはいえ、作曲家・評論家として音楽の道に戻った。ショパンは、ワルシャワ音楽院に進み、ユーゼフ・エルスナーに師事、ピアノ・作曲を学び、プロの音楽家として世に出て行った。音楽家として完成したショパンはポーランドを去ったものの、ポーランドがロシアからの独立を目指した時、帰国しようとしたものの、できず、パリにやって来た。パリでは、リストとの出会いもあって、ショパンも認められ、ジョルジュ・サンドとの出会いもあった。

 ショパンのピアノ作品が如何に洗練され、素晴らしい内容を併せ持ったものか。ルービンシュタインはショパンの音楽の本質を伝える演奏家として傑出していると言えよう。