アルフレッド・コルトー ショパン バラード 第4番 Op.52

 アルフレッド・コルトーによるショパン、バラード、第4番、Op.52。コルトーはショパン、シューマンなどの校訂版でも名を残した。また、1919年、パリにエコール・ノルマル音楽院を設立した。コンクールで優勝できなかった夭折のピアニスト、ディヌ・リパッティを支援したことでも有名である。この演奏も貴重な遺産の一つだろう。

 冒頭、物語の始まりを告げるかのような音型から、「悲しいワルツ」と言われる第1主題が歌われる。コルトーの詩情豊かで、深い味わいに満ちた歌が素晴らしい。第2主題の安らぎに満ちた歌。深々とした呼吸で歌われていく。再び、冒頭の恩恵に戻り、音楽が盛り上がっていく。コーダでの盛り上げ方、ドラマトゥルギーの表出は見事である。

 コルトーは、第2次世界大戦でフランスがドイツの占領下にあった際、ヴィシー政権に協力したことが災いし、戦後、スイス、ローザンヌに移り、1962年、84歳の生涯を閉じた。1952年、来日、当時の音楽ファンたちを熱狂させたことは忘れてはいけないだろう。