ヴィルヘルム・バックハウス ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第3番 Op.37

 ヴィルヘルム・バックハウスのベートーヴェン、ピアノ協奏曲全集も第3番に入る。ベートーヴェン得意のハ短調、第1楽章のオーケストラによる提示部は完全にベートーヴェンになっている。ハンス・シュミット・イッセルシュテットもここでは堂々たる演奏である。

 この協奏曲はプロイセン、ルイス・フェルディナント王子に献呈されている。ベートーヴェンの音楽をこよなく愛したものの、ナポレオン戦争、ザールフェルトの戦いで戦死した。プロイセンでもベートーヴェンの音楽が理解、かつ支持されていたことの証だろう。それが交響曲第9番、Op.125をプロイセン王、フリードリッヒ・ヴィルヘルム3世に献呈することにもつながる。

 ピアノが入ると勢いが増す。オーケストラも対等になり、ピアノがオーケストラを支える場面も出てくる。第4番になると、ピアノが最初から登場することになる。バックハウスも堂々たる演奏と共に、たっぷりと歌っていく。ただ、カデンツァはカール・ライネッケのものを用いている。バックハウスは協奏曲全体の性格を見た上で、ライネッケを用いたと考えてよいだろう。このカデンツァは緊迫感、抒情性を併せ持っている。

 ライネッケはハンブルク、アルトナ出身、ライプツィッヒ、ゲヴァントハウス管弦楽団の常任指揮者を務め、かなりの作品も残した。また、ベートーヴェン、ピアノソナタの校訂版も出している。近代のベートーヴェン解釈でも一時代を築いた演奏家である。

 第2楽章。バックハウスが素晴らしい歌を聴かせる。深々とした呼吸で、かつ淡々と弾き進める。イッセルシュテットも素晴らしい歌で応ずる。名器ベーゼンドルファーならではだろうか。深い味わいに満ちている。中間部のピアノとオーケストラの掛け合いも見事である。主部の再現ではピアノ、オーケストラの対話が絶品である。

 第3楽章。ピアノからロンドが始まる。バックハウスが全体を引っ張る。イッセルシュテットが応ずる。ピアノとオーケストラが完全に対等になり、交響曲風になる。ヴァイオリン協奏曲のピアノ版ではオーケストラとピアノが一体化、第5番「皇帝」では交響曲になっていく。中間部の主題がオーケストラでフーガ風に提示され、ピアノがホ長調で主題を演奏後、ハ短調に戻る独創性は、ブラームスがピアノ協奏曲、第1番でも取り入れた。ベートーヴェン、ブラームスも協奏曲に交響曲的な要素を加え、音楽的にも充実した作品にしたかったといえよう。コーダはハ長調、8分の6拍子になり、華やかに結ばれる。音楽も自然に流れ、見事な締めくくりを聴かせる。

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コメント: 2
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    admin (木曜日, 21 4月 2022 05:46)

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  • #2

    admin (木曜日, 21 4月 2022 05:47)

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