バッハ・コレギウム・ジャパン 第144回定期演奏会 ベートーヴェン「オリーヴ山のキリスト」Op.85


 バッハ・コレギウム・ジャパン、第144回定期演奏会はベートーヴェン「静かな海と楽しい航海」Op.112、交響曲第2番、Op.36、オラトリオ「オリーヴ山のキリスト」Op.85を取り上げた。(東京オペラシティ コンサートホール)

 「静かな海と楽しい航海」はゲーテの詩による作品。生涯、ベートーヴェンはゲーテを敬愛、カールスパート、テプリッツでの出会いは忘れられないものだったとはいえ、ゲーテにはベートーヴェンがオーストリア帝国の皇族・貴族たちに対し、行列を突っ切るといった非礼な態度を取ったことには批判的だった。ゲーテは、ベートーヴェンが作曲したこの作品には何も言及していない。一方で、ゲーテとベートーヴェンの文通は1823年頃まで続いていた。この作品を聴くと、海の静けさ、船が楽し気に進んでいく様子を見事に描いた名作の一つであることを再認識した。

 交響曲第2番は、ベートーヴェンがオーケストラを自由に操り、密度の高い作品に仕上げて行ったことを伺わせた。鈴木雅明の指揮も見事である。第2楽章の気品あふれる中に、ロマン性を忍ばせた性格を浮き彫りにしていた。

 「オリーヴ山のキリスト」は、イエス・キリストがローマ兵たちに捕えられるまでの葛藤を描き出した作品で、ベートーヴェンならではの充実した作風であることを再認識した。イエスがテノールで歌われることが、神の子・人間としての苦しみを浮き彫りにしたことでは成功した。鈴木准の見事な歌唱、セラフィムを歌った中屋早希、ペトロを歌った加耒徹も素晴らしかった。

 鈴木雅明がバッハ・コレギウム・ジャパンを指揮したベートーヴェン交響曲全集のCDが出てほしい。年末の第九も楽しみである。