ヘルベルト・フォン・カラヤン ヴァーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲 

 ヘルベルト・フォン・カラヤンがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と共に初来日を果たした1957年、旧NHKホールでの演奏を聴くと、当時の颯爽としたカラヤンが一際目立つ。

 ヴァーグナーの大作の一つ、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲。勇壮さ、ドイツ的な響きが素晴らしい。カラヤンの指揮ぶりも颯爽、生き生きしたものだったことがわかる。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のドイツ的な響きと相まってか、大変な名演奏だろう。

 当時のカラヤンはヴィーン国立歌劇場総監督も兼ね、登り竜のような勢いだった。その2年後、ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団と共に来日、当時の記者から、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団のどちらが好きかという質問が出た際、

「イスラム教徒の如く、等しく愛情を注いでいる。」

と答えた。しかし、1964年、ヴィーン国立歌劇場を去り、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団に専念する。

 1973年、今のNHKホールこけら落としの際、聴きに行き、「天下のカラヤン」を肌身で感じ取った。1974年以降のカラヤンは、病気がちになり、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との間に隙間風が吹き、1981年、女性クラリネット奏者、ザビーネ・マイヤーの入団問題がきっかけで、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との間に溝ができてしまった。その頃から、カラヤンはヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団との関係を深めたものの、1989年、大賀典夫氏の前で息を引き取った。1990年、ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団との来日公演が予定されても幻となった。

 1957年のカラヤンを収めたNHKテレビの映像が残っていたことを思うと、これは素晴らしい記録として後世に残したい一つだと感じている。