イングリット・ヘブラー シューベルト 楽興の時 D.780-1,2,3

 モーツァルト演奏家として定評があったイングリット・ヘブラーは、シューベルト演奏家としても定評があったものの、モーツァルトの方が大きかったためか、あまり顧みられていない。

 1968年のライヴ録音。第1曲の即興性とヴィーン情緒の調和。第2曲の深い歌心、その影に潜むシューベルトの孤独の悲しみ。それがこの作品を一層際立たせている。短いながらも充実した音楽の世界が広がる。第3曲。あまりにも有名な作品を甘さばかりではなく、辛さも交えつつも歌心を忘れていない。音色もヴィーンの温かみを忘れていない。

 この頃のヘブラーの容姿はすらりとした体形で、ドレスと調和した気品ある姿だった。年を取るにつれ、肥満傾向が出たためか、健康上の都合から引退となった。モーツァルト生誕250年記念の来日公演が中止になったことは致し方ない。ヘブラー全盛期の貴重なライヴ録音であり、シューベルト演奏家としてのヘブラー再評価に繋がってほしい。