仲道郁代 ピアノリサイタル

 昨年、新型コロナウィルスの影響で延期となった仲道郁代のリサイタル。今回は「幻想曲の系譜」をテーマにモーツァルト、幻想曲、K.475、シューマン、幻想曲、Op.17、ベートーヴェン、ソナタ、第28番、Op.101、シューベルト、さすらい人幻想曲、D.760を取り上げた。(サントリーホール)

 シューマンでは、第3楽章が初稿版(ベートーヴェン、歌曲集「遥かな恋人に」Op.98の引用によるコーダ)を用いたことでは、シューマンの思いを伝えたかったことによる。実際、シューマンはクラーラとの交際を禁じられ、苦しい毎日だった。クラーラの父、フリードリッヒ・ヴィークは、結婚するなら酒・たばこは止めてしっかりしてほしかった。その思いがシューマンに伝わったとは言えないが。演奏としても、シューマンの思いのたけが伝わって来た。

 ベートーヴェンでは、アントーニア・フォン・ブレンターノ夫人への恋を清算、晩年の孤高の境地へと進みゆく心情が伝わった。シューマンを聴いた後で聴くと、ベートーヴェンとの繋がりが見えて来た。

 シューベルトは、リストへの道、単一楽章によるソナタ、ロ短調への繋がりを感じた。これも、ベートーヴェンとの繋がりを見ると、ソナタ、第13番、Op.27-1だろう。

 アンコールはドビュッシー、前奏曲集第1巻「亜麻色の髪の乙女」が一段と素晴らしい響きを伝えた。至福の一時だったといえようか。