カルロス・クライバー ベートーヴェン 交響曲第7番 Op.92

 カルロス・クライバーがバイエルン国立管弦楽団を指揮したベートーヴェン、交響曲第7番、Op.92。1986年、バイエル国立管弦楽団との公演も思い出す。クライバーが出て来ると、「待ってました、大統領」という勢いで、

「おー、クライバー。」

と興奮するほどの熱狂だった。

 ベートーヴェンは既に、「英雄」、第5番(「運命」と言うべきか)、「田園」を含む6曲の交響曲を生み出した。この第7番は、ヴァーグナーが「舞踏の聖化」というほど、古代ギリシアの舞踏、演劇の神デュオニュソスを意識している。

 クライバー自身、ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団とのレコーディングも残している。これは1982年5月3日、オーストリアの名匠、カール・ベーム追悼コンサートでのライヴ録音である。1981年8月14日、86歳でこの世を去った名匠への思いを込めたコンサート。カルロス渾身の演奏が生まれた。

 第1楽章の重厚感ある推進力。第2楽章の深い音色と歌。カルロスは偉大な父、エーリッヒ・クライバーの影に苦しんだかもしれない。また、帝王ヘルベルト・フォン・カラヤンも尊敬していた。ベームはどうだったか。とはいえ、このコンサートでの演奏が答えだろうか。曲が進むにつれ、フーガ風部分での盛り上げ方、声部処理の見事さは素晴らしい。第3楽章のスケルツォ主部の推進力、生気に満ちている。中間部の歌との対比もは聴きものである。第4楽章。この交響曲のクライマックスと言うべき楽章で、聴く者を圧倒する力がさく裂する。人間の喜びの根源たる舞踏の精神が全体を覆い、素晴らしい推進力で一気に流れる。カルロス・クライバーを聴いていると、人間そのものではないだろうか。コーダになると心が高揚する。

 精神力・感覚が一体化した音楽。これこそ、カルロス・クライバーが目指したものではなかっただろうか。カルロス・クライバーほど、ライヴで真価を発揮した指揮者はいないだろう。それは、ピアニスト、マルタ・アルゲリッチにもつながる面がある。アルゲリッチの本領もライヴではなかろうか。