ヴィルヘルム・ケンプ ヘンリック・シェリング ピエール・フルニエ ベートーヴェン ピアノ3重奏曲 第7番 Op.97「大公」

 ヴィルヘルム・ケンプ、ヘンリック・シェリング、ピエール・フルニエによるベートーヴェン、ピアノ3重奏曲全集もルドルフ大公に献呈した第7番、Op.97「大公」にたどり着いた。

 この時期のベートーヴェンはモットー中心の統一法から、カンタービレ主題中心とはいえ、潜在する動機により全体を統一する「潜在的動機統一法」に基づく。また、楽器間の関係も緊密になっている。ベートーヴェンの室内楽曲の一つの到達点に達したといえようか。

 第1楽章を聴くと、高貴な第1主題がじっくりピアノに歌われ、ヴァイオリン・チェロが絡み合っていく。ケンプ、シェリング、フルニエが一つに溶け合っている。展開部でのヴァイオリン・チェロが第1主題の動機を展開、クライマックスを築き、再現部に至る。3人がじっくり会話を楽しんでいるかのようである。歌心も素晴らしい。名人の至芸だろう。

 第2楽章のスケルツォ。形式はA-B-A-B-Aのロンド形式をとる。ヴァイオリン、チェロのカノンからピアノが入っていく。そこでも名人の技、音楽作りが見事である。歌心も十分。トリオでも名人ならではの味が聴ける。

 第3楽章。ピアノがじっくり歌い上げる主題に基づく変奏曲。ヴァイオリン・チェロも加わり、深みを増す。名人の深々とした歌心が素晴らしい。フルニエが深々と歌い上げると、シェリングも深々と歌う。ケンプが全体を支えつつ、深々とした歌心で支える。しっとりした気分の会話が聞こえるようである。第4楽章へと続く。

 第4楽章。ピアノがロンド主題を歌うと、ヴァイオリン・チェロが絡み合って、スケールの大きな音楽へと発展する。これ見よがしではなく、気品漂う名演になっている。再現部ではヴァイオリン・チェロからピアノへ引き継がれ、厚みも増す。コーダは8分の6拍子となり、テンポも早くなって力強い終止となる。3人が力を出し合い、一つになっていく。見事な演奏である。

 かつて、NHKではユーディ・メニューインがヴァイオリンを担当した演奏を放送したことがある。もし、メニューインとの演奏があったら、もう一度聴きたい。