ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ニューイヤーコンサート 1987

 ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ニューイヤーコンサート、1987年はヘルベルト・フォン・カラヤンが指揮台に上った。この2年後の1989年7月16日、カラヤンはザルツブルク郊外の自宅に大賀典夫の訪問を受けた際、大賀の目の前で81歳を閉じることになる。これはカラヤン晩年の貴重なライヴとしても価値は大きい。

 ヨハン・シュトラウス2世、オペレッタ「こうもり」序曲を聴くとカラヤンならではの音楽作りが窺える。故国オーストリアに帰ってきた安堵感か。長年常任を務めたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との軋轢を忘れたかのようである。ヨーゼフ・シュトラウス、ワルツ「天体の音楽」、Op.235には晩年のカラヤンの到達点が感じられる。ヨハン・シュトラウス1世「アンネン・ポルカ」、Op.137の洒落た味わいにも見られる。このコンサート一番の聴きものは、キャスリーン・バトル独唱によるワルツ「春の声」Op.410だろう。カラヤンの好サポートが光る。

 カラヤンはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団ともシュトラウス・ファミリーの音楽をレコーディングしている。ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団とのニューイヤーコンサートで、ようやくシュトラウス・ファミリーの音楽に到達したと言えようか。

 カラヤンの余命あと2年という中、素晴らしい記録としても残るだろう。

コメントをお書きください

コメント: 1
  • #1

    武石富士雄 (日曜日, 18 3月 2018 10:09)

    楽壇にデビューして以来、カラヤンが色々な事をやって、色々な音楽のスタイルを打ち出して、様々な評価を経験しながらぐる~っと回って、一番最初の、カラヤンが一番無邪気だった頃に帰って来たような感じがします。演奏の折々には、彼が未だ心が傷ついているかの様な気難しさも感じられないではないけれど、しかしそれを庇うかのように、そこは音楽の喜びと安らぎが満ち溢れています。彼にとって、魂の「帰る処」は、ひょっとしてここだったのではないでしょうか。