横山幸雄 ピアノリサイタル ベートーヴェン・プラス 第4回

 今や日本を代表するピアニストとなった横山幸雄が、2013年から2020年のベートーヴェン生誕250年に至るコンサート・シリーズ、ベートーヴェン・プラスも第4回となった。昨年はデビュー25周年を記念して、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全5曲を取り上げた。今年はリサイタルに戻り、ピアノ・ソナタ創作では実験期に当たる第13番から第18番の6曲を中心に、「幻想」をテーマとして、バッハ、モーツァルト、ショパン、シューマンの作品を取り上げた。

 第13番、Op.27-1「幻想風」、第14番、Op.27-2「月光」第15番、Op.28「田園」は集中力と抒情性、スケールの大きさ、歌心が調和した演奏だった。7つのバガテル、Op.33は抒情性、ユーモアに溢れ、全ての調整による2つの前奏曲、Op.39はめったに聴かれないとはいえ、なかなかの聴きものであった。

 第16番、Op.31-1はユーモアと歌心に満ち、第17番、Op.31-2「テンペスト」はドラマトゥルギーの表出、スケールの大きさ、抒情性が調和していた。第18番、Op.31-3もスケールの大きさ、ユーモアと抒情性十分であった。

 バッハ、半音階的幻想曲とフーガ、BWV903は整然とした中にもスケールの大きさが感じられた。モーツァルト、幻想曲、K.397はロマン的な性格を捉えていた。ショパン、幻想曲、Op.49はリストがこの作品をヒントにして、ソナタを作曲した可能性が感じられた。幻想即興曲、Op.66も聴きものだった。幻想ポロネーズ、Op.61はジョルジュ・サンドとの関係が破綻に向かう中でのショパンの心境を描きだしていた。シューマン、幻想曲、Op.17はボン、ベートーヴェン記念碑建立のためのソナタとして構想したとはいえ、クラーラへの思いを秘めていることを掴み、見事に表現していた。

 アンコールは横山自身が編曲したバッハ=グノー「アヴェ・マリア」。素晴らしい編曲だった。上野学園大学の経営問題で苦しい立場にあるとはいえ、精力的な活動を行っている姿を見ると、心から励ましの言葉を贈りたい。