ロシアのウクライナ侵攻が長期化する中、ロシア音楽普及に努めて来た二期会、バス、岸本力が今、ロシア歌曲を歌ってよいものかと苦悩している。
岸本は、ロシアのウクライナ侵攻以来、ウクライナの無残な現状・ロシア軍の残虐さなどを見るにつけ、ロシア歌曲を歌い続けてよいかと苦悩しつつ、声楽家・音楽家として模索している。岸本がロシア音楽普及の功績により、ロシア政府から表彰された経緯があっても、戦争の現実に苦悩する姿を見ると、戦争と音楽との関係を改めて私たちに突きつけた。
ロシア音楽では、グリンカ・ムソルグスキー・チャイコフスキー・ラフマニノフなどが優れた歌曲を残した。戦争がロシア歌曲の名作を否定することはあってはならないとはいえ、今の情勢を見ると、ロシア音楽・ロシア歌曲を歌えるか、聴きたくないと言えるか。オーケストラのコンサートでも、チャイコフスキーなどがプログラムに上がっている。音楽家たちもジレンマの中にある。
第2次世界大戦中、ドイツ占領下のフランスで、レジスタンスたちがドイツ兵の合唱には耳を背けることができなかったという。ロシアのウクライナ侵攻が長期化する今、私たちは音楽と戦争をどう考えたらよいだろうか。岸本の苦悩は、私たちに音楽と戦争との関係を鋭く問いかけている。
音楽と戦争。今こそ、私たちが真摯に考える時が来ている。
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