パウル・バドゥラ・スコダ シューベルト 3つのピアノ曲D.946

 パウル・バドゥラ・スコダによるシューベルト、3つのピアノ曲、D.946を聴く。これはスコダ自身、ヴィーン原典版の校訂にあたっている。自筆草稿、ブラームスが出版した初版を基に行った本格的なもので、日本ではあまりに注目されなかったこの作品を紹介した意義は大きい。作曲はシューベルトが亡くなる半年前、1828年5月で、まさに燃え尽きんとするシューベルトがこの3つの小品に込めた思いは大きい。

 第1曲は変ホ短調、ロ長調、変ホ短調から変ホ長調へ戻っていく。ギャロップ風の急速な主部、歌に満ちた中間部、主部にはシューベルトが自らの死期を悟ったかのような思いに満ちている。せめて、あとわずかな時期、何かを残したい思いを伝えて来る。しかし、もう一つ、変イ長調の部分があったが、シューベルトが削除した。スコダはこの部分も公にしている。

 第2曲はシューベルトらしい歌が漂うものの、いささかメランコリックなA、激しい動きでハ短調からハ長調へ転ずるBからA、変イ短調の哀愁に満ちたCを経てAに戻るロンド形式。悲しみに満ちたCにはシューベルトの絶望感がひしひしと伝わって来る。

 第3曲はハンガリー舞曲風の主部、変ニ長調の中間部、主部による3部形式。全3曲の締めくくりに相応しい、スケールの大きさが素晴らしい。

 この3曲の内容はD.899、D.935の即興曲集より深い。この3曲の後、3つのピアノ・ソナタに取り組み、シューベルトは11月19日、この世を去っていく。スコダはそんなシューベルトの心境を克明に描き出している。