レナード・バーンスタイン マーラー 交響曲第10番 アダージョ

 マーラーの死によって未完成となった交響曲第10番、アダージョは身勝手な愛情で妻、アルマを「かごの中の鳥」にした挙句精神的にも追い詰め、アルマは鬱状態、アルコール中毒寸前になり、多くの男性遍歴を重ね、ヴァルター・グロピウスとの恋愛に走った。これを知ったマーラーは精神科医フロイトの診察を受け、アルマとの関係修復に動き出し、わかり合える夫婦にならんとした矢先、連鎖球菌感染症にかかり、高熱をおしてニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団演奏会の指揮台に立ったことが命取りとなった。

 このアダージョを聴くと、身勝手な愛情でアルマを縛り付けたマーラーが、アルマとグロピウスの恋愛を知り、わかり合える夫婦となるまでの苦悩、悟りが伝わる。バーンスタインはエルヴィン・ラッツの全集版に基づき、マーラーの苦悩、悟りを見事に描いている。わかり合える夫婦にならんとした時に襲った病でこの世を去ったマーラーの救いを求めんとした苦悩、悟り。スケッチとして残った構想には、マーラーの悟りの境地がにじみ出ていたかもしれない。バーンスタインもそれを感じ取っていただろうか。